未病とは

発音はMibyou(みびょう)、中国ではWeibing(ウェィイビン)と発音される「未病」ということばを聞く機会が最近多くなってきました。近年「未病」という概念は確実に定着してきており、世界共通言語になりつつあります。中国でもMibyou(みびょう)という発音でも意思疎通できる機会も増えてきました。

未病という状態とは?

未病とは、そのまま放置していれば、ゆくゆくは病気に向かって進んでいる状態をいいます。健康な人が、ある日を境に突然病気になるわけではありません。健康な状態から徐々になんらかの不調が出始めて、最終的には本当の病気になってしまうのです。未病という言葉は約2千年前の中国後漢の時代、『黄帝内経』という古い医学書に初めてあらわれており、古代哲学である陰陽思想と五行論理を中心思想として展開されています。この未病とは字のあらわすように、「にあらず」と言う状態をさし、黄帝内経では「聖人は已病(いびょう)の病気を治さずして(すでにある病気をなおすのではなく)未病を治す」などの言葉が見られます。もともと中医学は皇帝のための医学として発展してき面がありますから、皇帝を已病させないように未病を治し、不老長寿を願ったものだったといえるのではないでしょうか。

一口に「未病」といっても、医学的見解の違いからふたつに分類することができます。

  1. 健康診断では異常がないが、体の不調という自覚症状がある場合:「中医学的未病」
  2. 自覚症状はないが、健康診断によって異常がみつかった場合:「現代(西洋)医学的未病」

どちらの場合も薬などの治療手段を用いなくても、日常の食事や生活習慣で改善できる状態を未病と考えます。現代(西洋)医学は、症状を出発点としてさまざまな検査を経て、収集された情報を病気ごとの診断基準に照らし合わせて診断をおこないます。一方中医学は、症状を出発点とするのは同じですが、患者個々人の微妙に異なる身体所見を、その人の社会環境、生活環境、気候条件などを考慮して、治療方針を選択します。一般的な医療機関で行なわれている現代(西洋)医学は、検査データを重視するため、検査結果により異常が見つかれば対応することができますが、データに表れない症状に対してはあまり有効な治療法はありません。未病という言葉の発祥地である中国では、軽い心身の不調でも本格的な病気の前兆と考えられてきました。近年、西洋医学で注目され始めた「予防医学」の考え方は、中医学では数千年も前に取り入れられていたのです。

医学が著しく進歩してきた現代ですが、生活習慣病や難病も増えており、現代西洋医学だけでは解決できない病気も増えています。一方、検査をしても異常はなく病気ではないが、体の不調を感じる「未病」の人も多くなっています。「未病」はそのまま放置していれば、ゆくゆくは生活習慣病や難病の原因になると考えられています。普段から食事や生活習慣に気をつけていれば、体のバランスをくずした「未病」の状態にはなりませんし、生活習慣病や難病にもならなくて済むのではないでしょうか。

今こそ、病気の芽生えである「未病」を予防することが大切です。